秋田家庭裁判所大館支部 事件番号不詳 決定
本籍 秋田県○○市○○町○十○番地
住居 本籍に同じ
職業 無職
氏名 藤山三平(仮名)
年令 十八年(昭和十三年一月二十五日生)
主文
少年を中等少年院に送致する。
理由
一、罪となるべき事実
少年は伊○○○郎、関○○夫、糸○○と秋田県○○郡○○町○○○○十○番地質屋営業○井○ナ(当六十六年)方に押入り金品を強取しようと謀議し、昭和三十一年三月十三日午後十二時頃、少年は白布で伊○、関○、糸○はマフラーで夫々覆面し、伊○は刄渡り十糎のナイフ一丁を、関○は刄渡り十一糎等の匕首一振を夫々携帯して右○井方の施錠なき便所硝子窓より屋内に忍入り、二階八畳間において糸○は伊○から前記ナイフを受取り就寝中の○井○ナの寝具を剥ぎとり驚愕して目を醒した同女に対し右ナイフを突きつけて「婆騷ぐな、騷ぐと殺すぞ、金はどこにある。」等と申向け続いて○藤が同女の顏面を手挙を揮つて殴打し、更に糸○がその顏面を蹴付け、関○が同女に布団をかぶせて押えつける等暴行脅迫を加えて同女を畏怖せしめその反抗を抑圧した上、同女所有の現金六百四十円、同女の保管する写真機三個、腕時計、衣類等五十九点(時価九万九千三十円相当)を強取したものであるが、その際暴行により同女に対し全治一週間を要する上口唇挫傷を負わしめたものである。
二、適条
右の事実は刑法第百三十条第二百四十条第六十条に該当する。
三、主文掲記の保護処分をなす理由
1、少年の家庭環境について、
少年家は父が昭和二十四年死亡し現在毋、長兄夫婦、姉二人、弟三人と少年の九人家族であるが、経済事情が稍々逼迫しており且つ嫂と他の家族との間に潜在葛藤があり必ずしも安定した雰囲気ではない。殊に少年は嫂との折合が悪く又その怠惰な生活態度から長兄より叱責を受け更に少年の在学当時の成績不良に基く家族の劣等視などがあつて家庭は少年にとつて安定した生活の場とはなつていなかつた。従来毋は他の家族に対して少年の非行を庇うことに終始し長兄は徒らに叱責を与えるのみで共に保護意欲は認められるが、保護態度に適切を欠き少年をして家庭逃避の傾向に追いやつていたものである。
2、少年の社会的環境について、
少年は昭和二十八年三月中学を卒業しているが、中学時代、学業の理解困難から通学意欲を喪失し素行不良な学友と交際して不健全行動をなしていたが保護者の教育的無関心はこの傾向に拍車をかけていた。卒業後、約半年程鋸店徒弟となつたが住込生活の窮屈さを嫌つて退職し以後昭和三十年十二月迄中学当時の友人等と共に転々出稼生活を繰り返していたものである。この出稼生活は少年の場合、便宜的な生活の場としてより意味を持たず投機的、消費的な生活態度に終始し創造的、建設的な価値的意欲が認められない。本年一月以降少年は家庭にあつて徒食の生活を送つていたが、此の間家財持出、交友不良、夜遊び等の虞犯行為を続け家族感情を刺戟して家庭における自己の立場を悪化せしめていたものである。出稼先の飯場という特殊社会での生活態度をそのまま一般社会において持していたところに不適応を招来する原因があつたと認められる。少年については住所近隣にも悪評があり、交友関係、家庭環境を考慮する時家庭において少年の更生を期することは困難であると思料されるが現在他に適当な社会資源もない。
3、少年の資質について、
少年の知能は準正常智(知能指数八十八)でありその性格には不安定性、爆発性、自己顕示性、意志欠如等の偏倚傾向が認められる。基礎知識に欠け従つて道義的判断欠如し衡動的行為が多いが外界からの刺戟に対して時としてヒステリツクな攻撃姿勢をとることがあり適応失調を招来し易い危険性がある。
4、本件非行について、
本件非行当時の家庭逃避の傾向は愈々強まつていたが主犯伊○から本件敢行の誘いを受けるや賍金等を出稼の費用に充てようと考えたやすく強盜の実行を決意して本件非行をなしたものである。犯意に積極性が窺われるが実行々為に当つては少年は何等主動的役割をなさず金品強取行為の際右キナの見張役を担当した程度であり又賍金品の配分もうけていない。
当裁判所は本件事犯の重大性とその社会的影響について深い考慮をなしたが、教育的可塑性ある本少年の場合、尚保護処分を以て少年の更生を期するのが妥当であり且つ前記諸点を勘案して本少年については収容教育を施し規則的生活に訓致させることが適切であると認め少年法第二十四条第一項第三号、少年院法第二条、少年審判規則第三十七条第一項に基き主文の通り決定する。
(裁判官 藤巻昇)